消化器外科

肝胆膵外科の紹介

 肝・胆・膵グループでは胆のう結石症、胆のうポリープ、胆管結石症などの良性疾患、肝がん(原発性肝がん、転移性肝がん)、胆道がん(胆のうがん、胆管がん、十二指腸乳頭部がん)、膵がん等の悪性疾患に対する内視鏡治療および手術を担当しています。初診時に閉塞性黄疸で外科へ受診いただいた場合、そこから内視鏡的手技を駆使しつつ診断・減黄(黄疸を改善させる処置)から治療(手術)までを一貫して当科で行っているのが大きな特徴です。

肝臓外科

 腹部超音波検査・造影ヘリカルCT・造影MRI検査による画像診断、ICG試験・アシアロシンチグラフィーによる肝予備能評価を行い、かつ全身状態の検討を十分に行った上で適応のある症例に対して外科的切除を行っています。

肝細胞癌

 ウィルス性肝炎・肝硬変を背景肝とする場合が多く、肝予備能評価に加え併存する他の合併症も含めて治療法を検討しています。腫瘍径が3cm弱を超える場合や、近接する脈管への影響・腫瘍の位置のために経皮的ラジオ波焼灼術(RFA)が困難な場合、開腹下の担癌門脈灌流領域の切除=系統的肝切除を基本としています。
 耐術困難と予想される場合は肝臓内科医により経皮的なラジオ波療法(RFA)、血管内治療(TACE)、全身化学療法などから患者さんの状態に適した治療法を選択しています。週1回の定期合同カンファレンスで外科・内科・放射線科の専門医師が綿密な討議を行い、治療方針を決定しています。
 昨年は、巨大肝細胞癌の患者さんに対して当院心臓血管外科の協力のもと、拡大右肝切除(腫瘍径20cm)、右三区域切除(腫瘍径17cm)を施行し、合併症なく退院されています。

転移性肝癌

 特に大腸・直腸癌によるものでは、外科的肝切除術単独では切除後の早期再発が懸念されます。このため当院腫瘍内科と綿密に連携し外科的肝切除に術前および術後化学療法を組み合わせた治療を積極的に行っています(結腸癌以外の肝転移でも切除の適応となる場合もあります)。また2008年からは腹腔鏡(補助)下肝切除術を導入しています。

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胆道・膵臓外科

胆嚢結石症・急性胆嚢炎

 基本的に有症状の胆嚢結石症を手術適応とし、腹腔鏡下胆嚢摘出術を第一選択としています。胃切除等の開腹手術の既往がある方に対しても可能な限り腹腔鏡を選択しています。急性胆嚢炎の治療は、急性胆道炎のガイドラインに準じて早期の手術(胆嚢摘出)を基本方針としていますが、発症後時間が経過している胆嚢炎では、軽症例に対しては補液や抗生剤投与といった保存的加療で対応し、重症例に対しては経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)・経皮経肝胆嚢穿刺(PTGBA)を行い状態の改善後、待期的に手術を施行しています。

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胆道癌・膵臓癌

 腹部超音波検査、造影ヘリカルCT・MRI検査、MRCP、更には必要あればERCP下の擦過細胞診・生検・管腔内超音波(IDUS)といった手技を駆使して胆道癌(胆管癌、胆嚢癌)や、膵臓癌・膵嚢胞性病変の精密診断を行っています。週2回行っている外科定期カンファレンスで厳密に適応を検討し治療方針を決定しています。

肝門部・上部胆管癌

 胆道再建を伴う肝切除術を基本としています。特に尾状葉全切除を伴う拡大右肝切除の場合で予定残肝容量が小さい場合、切除側の門脈塞栓術を行い残肝の代償性肥大を待って根治切除を行う方針としています。昨年は肝門部胆管癌による胆道閉塞に対して、最終的に3本のERBD(内視鏡的胆道ステント留置)で胆管炎を何とかコントロールし、その後門脈塞栓術を行って後日拡大右肝切除・胆管切除再建を施行し無事独歩退院された70代後半の患者さんがいらっしゃいました。

中部・下部胆管癌

 膵頭十二指腸切除術(PD)もしくは幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PpPD)を基本としています。昨年には、50代の広範囲胆管癌の患者さんに対して一般に高難度・高侵襲とされる拡大肝葉切除にPpPDを併施するいわゆる肝膵同時切除(HPpPD)を行い、大きな合併症なく退院されました。

膵臓癌

 膵頭十二指腸切除術(PD)もしくは幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PpPD)や膵体尾部切除術といった外科的切除を行っています。根治性向上を目指して積極的に門脈合併切除再建を併施しており年々その施行率が上昇傾向にあります。ここ2年間で膵頭部癌切除8例に門脈・上腸間膜静脈合併切除を安全に施行し得ました。また、最近の10症例以上で膵体尾部切除後の縫合不全(膵液瘻)は軽症の1例のみでした。

胆嚢癌

 漿膜下層(ss)以上の癌で、大きな脈管への浸潤の無いものについては、中央下区域切除(S4a+5)を基本とし、胆管側への進展の程度により肝外胆管切除・再建を考慮しています。年齢的・体力的な問題から肝床切除術(拡大胆嚢摘出術)を選択する場合もあります。昨年は胆嚢癌による門脈浸潤・肝門部胆道閉塞に対して術前に3本のERBD(内視鏡的胆道ステント留置)で胆管炎をコントロールし得、拡大右肝切除・門脈胆管切除再建を施行し無事独歩退院された80代の患者さんがいらっしゃいました。

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  これら膵・胆道癌に対しては、各癌の取り扱い規約に準じ2群リンパ節郭清を基本とし、当院の病理検査科の全面的なバックアップにより、術中迅速病理診断にて切除断端を組織学的に確認しています。
 胆道再建に関しましては、これまで最高5本までの同時胆管再建まで施行していますが、これまで明らかな縫合不全は軽症例の4例でした。
 膵切除術で最も懸念される合併症に膵液瘻(膵空腸吻合縫合不全)が挙げられますが、特にPD・PpPD後の膵液瘻は2007~2011年の5年間で明らかなものは6例のみで、いずれも保存的に軽快・退院されています。
 根治手術の適応を超えた膵胆道系悪性疾患に関しましては、当院腫瘍内科医と連携して化学療法・化学放射線療法の適応を検討し、ERCP下の胆道ステント留置(ERBD)や経皮経肝胆道ドレナージ術(PTBD)、バイパス手術(胆管空腸吻合、胃空腸吻合)を行っています。

手術症例数(肝・胆・膵外科)

(各年は1月1日~同年12月末日まで)

  術式 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年

肝・胆道 手術

<肝切除総計> 20 19 24 21 27 37
部分切除 9 12 11 11 11 8
右肝切除 2     2 4 3
拡大右肝切除
 (胆管・門脈切除含む)
    1     3
右三区域切除
 (胆管切除含む)
        1 1
左肝切除 2   3 2 2 1
拡大左肝切除
 (胆管切除含む)※
        1 1
肝膵同時切除(HPPPD)           1
区域切除 7 5 6 2 3 7
 (前区域)           (1)
 (外側区) (2) (1) (3) (1) (2) (4)
 (内側区)     (1)      
 (後区域、拡大後区域)   (1) (2) (1) (1) (2)
 (中央2区域) (1) (2)        
亜区域切除     1   1 6
肝床部切除
 (胆管切除含む)
  2 2 1 6 7
下大静脈関連
 (腫瘍栓摘出等)
        3  
胆嚢摘出※ 183 143 146 110 148 160
 (腹腔鏡下胆嚢摘出術)※ (147) (117) (132) (87) (113) (146)
肝外胆管切除・胆道再建
 (小児を含む)
      1 3  
その他       3   8
膵手術 膵体尾部切除※ 6 3 4 5 4 4
膵頭十二指腸切除PD
 (幽門輪温存含む)※
11 9 8 8 11 11
 (門脈/上腸間膜静脈切除再建併施PD) (1) (2)   (3) (6) (2)
Frey手術
 (胆管十二指腸吻合含む)
        1 1

鏡視下  手術

 (腹腔鏡下肝部分切除)※     (3) (1) (2)  
 (腹腔鏡補助下右肝切除)           (1)
 (腹腔鏡補助下外側区域切除)           (1)
 (腹腔鏡下尾側膵切除術)※   (1) (2)     (1)
 (腹腔鏡下総胆管切開截石術)           (2)
 (腹腔鏡下脾摘)           (3)

 ※併施を含む

胆膵内視鏡(ERCP;内視鏡的逆行性胆道膵管造影)

 他院からのERCP困難例の紹介も増えつつあり、平成23年中に施行したERCP数は例年通り非常に多く387例でした。九州地区ではトップクラスの症例数を誇っています。

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  当院のERCPは、外科では九州大学第一外科内視鏡(ERCP)グループ出身の川本(平成18年8月より)および貞苅(平成22年4月より)、安井(平成23年4月より)が、内科では九州大学第一内科出身の上平(平成19年4月より)が担当しています。総胆管結石症に対しては、基本的に内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)を行い内視鏡的結石除去を行っています。緊急処置が必要とされる、総胆管結石等による急性閉塞性胆管炎(AOC・AOSC)に関しても必要であれば夜間に緊急で内視鏡的胆道ドレナージ術を行える体制を整えています。

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  膵胆道系の診断は、侵襲度の低いMRCPや造影ヘリカルCT検査を第一選択としており、急性胆管炎や閉塞性黄疸に対する処置(胆道ドレナージ術・截石術)、もしくは詳細な造影像・局所の擦過細胞診や生検といった精密診断が必要な場合にのみERCPを行っています。胃切除後(ビルロートI法・II法)の場合でもERCPによる内視鏡的治療を第一選択としています(胃切除ルーワイ再建後の場合では、当院内科上平医師に内視鏡治療を依頼しています)。胆管挿管困難例に対しては膵管内ガイドワイヤー留置法・膵管ステント留置法を併用して安全な内視鏡治療に留意しています。
 様々な理由により外科的切除が難しい悪性胆道狭窄・閉塞性黄疸の患者さんに対しても、最新の器具を併用して安全性に留意しつつ内視鏡的胆道処置を行いQOL(生活の質)の向上に努めています。

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その他

内視鏡治療について

 当院では、減黄処置が困難で超高度閉塞性黄疸・肝不全に陥り危険な状態にあったものの転院後緊急に施行した内視鏡的胆道ステント留置術による救命例や、膵管閉塞により経口摂取不能で転院後に施行した内視鏡的膵管ステント留置術著効例といった治療経験を多数有しています。

肝切除術について

 超音波切開凝固装置やコンピュータ制御電気メスシステム、ベッセルシーリングシステムといった最新鋭の医療機器を導入しています。特に転移性肝癌などの正常肝の肝切除の場合は無輸血で施行できる場合が多く、概ね2週間程度で皆さん御元気に退院していただいております。腹腔鏡(補助)下肝切除術の場合は、更に短期間の入院となっています。

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胆道・膵臓外科について

 一般的に高難度腹部外科手術とされる膵頭十二指腸切除術(幽門輪温存膵頭十二指腸切除術)におきましても、排ガスのみられる術後3~5日目より経口摂取を開始できる場合が多く、また80歳以上の高齢の患者さんでも(若年の患者さんと比較すると少し回復に時間はかかりますが)重篤な合併症の発生なく順調に経過され皆さんお元気に退院していただいています。

セカンドオピニオンへの対応

 肝胆膵疾患全般で他院からのセカンドオピニオンを受け付けています。この領域の外科的治療は「高侵襲=高リスク」の内容が多いことが特徴です。(時間はかかりますが)何よりもまずは患者さんと御家族へのわかり易い説明を心がけ、「何故そのような治療が必要なのか」を御理解いただくよう努力しています。是非一度御気軽に御相談ください。尚、当院から他院へのセカンドオピニオンを希望された場合は、当院で施行しました検査データを含めた全ての情報を提供させていただいています。

(文責:川本雅彦)

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